出発前7

のんびりしすぎていたらしい。

GW明け、電話で土曜発の見積もりを出してもらった所、もう行きの飛行機は一杯とのことだった。なんてこった!すっちーやおっさんずラブやシャンシャンの乳離れ、あとは安室透などに気を取られているうちに大前提である足を押さえることに関して悠長になってしまっていた。

日曜も埋まっており、前日の金曜発はまだ空きがあるとのことで、Eちゃんに有給6日取れないか、ということを打診するも、自分は大丈夫だが周りの人間は忙しいので5日以上有給を取るのは体感的に無理、と連絡が返ってきた。

 

中堅が休める時に休まなければ後輩はもっと休みが取れないじゃないか!つーか、5日休んだら1日増えても変わんないよ!…多分。…。

 

せっかく北欧なんて、滅多に行かないような所に行くのに…と悶々とした気分になった。しかしながら、自分で体験したことだったとしても、他人の気持ちは当事者でない限り完全には理解し得ない。それを頭に置き、慮ることが他者との関わりにおいて大事なのだ。なんて綺麗事並べても、まぁスッキリとはしない。数分かかったが、どう反論しても覆りそうにない現実と向き合った。仕方ない。兎に角5月中に行きたいのは私の都合なのだから。どう考えても私の無職が圧倒的に悪い。

 

7日の旅程になることを了承し、翌日遅くまで営業している旅行会社に行くことを決めた。前回の旅行会社のお姉さん、色々ごめん。

出発前6

翌朝になってもEちゃんからの返事はないままだった。勘弁してくれと思いつつ、返事がないのは揺れているのだろうなということも伝わって来た。丸一日経ち、他の友達でも誘おうか、という所で待ちに待った返事が返って来た。

“1日経って少し落ち着きました。こちらこそ、ごめん。一人で海外に行く勇気はないし、北欧に興味はあるのでこの機会に行って見たいです。”

行きたい気持ちが勝ったのだ。私は大いに笑った。Eちゃんに知られないのをいい事に腹の底から笑った。この素直な所がEちゃんの美点である。そのLINEにはしっかり下調べすることと、”ヘルシンキコペンハーゲンでお土産が買いたいのでスーパーには必ず行きたいのでよろしく”と付け加えてあった。

スーパー。そういえば計画の初期段階から何度か言っていたような気がする、スーパー。現地の人間が買うようなものをチェックしたいだとか、そういうことではどうやらないらしい。確認すると、iyamaというコペンハーゲンにある少女のマークの高級スーパーに行きたいらしい。実際私が購入した観光ブックにも紹介されており、可愛いことで有名とのことだ。スーパーに行かないとは一言も言った覚えがないのだが(ヘルシンキコペンハーゲンはすぐ見終わるという情報を得た時に、その分ストックホルムに割こうだとか、そういうことはいったかもしれないが)

Eちゃんのiyamaに対する執念というか主張は物凄く、とにかくそのスーパーに行く情熱が伝わってきたので、その後からご機嫌を損ねないようにスーパーには行くということを何度も伝えるようにした。ら、そのうち馬鹿にしてるでしょ!と怒られた。

 

とにかく北欧に行くんだーその気持ちだけだった。しかし、いざこざしているうちに世間はGW突入、旅行会社も休みに入ってしまい、話が進まないまま時間だけ過ぎた。

出発前5

バスに速攻で乗った件は反省しつつ、帰りに近所の本屋で北欧のガイドブックを見に行った。田舎の本屋にも関わらず北欧のガイドブックは何冊かあった。いわゆる最大手の物を購入しようかと考えたのだが、まずは文章が多いものではなく、写真多めで、持ち歩きやすそうな物を選び購入した。気分を高めたかったからだ。のちにEちゃんと同じものを教科書のごとく購入していたことが判明する。それはともかくとして、バスの中でEちゃんの機嫌を確認するべく、フリープランで北欧に行った方達の体験談を送ってみたりしたのだが、結局その日は返事がなかった。
 
それはそうと、旅行会社でお話を聞いたことで今までただのカタカナであった都市名が現実的に頭に少しは入るようになった。コペンハーゲンは見所が集中しているため、1日あれば廻れるであったり、ストックホルムは何日か割いた方がよいとか、そういったことだ。ホテル四つ星指定と書いてあると、いやいやそんな身分じゃございません😣鍵が閉まって安心して眠れりゃそれでいいですよ、と思っていたのだが、まずホテルのランクは各旅行会社が設定したものであるということ。
その旅行会社ではランクを下げると、ホテルの指定が出来なくなる為、最悪都市部から30分程離れた場所になる可能性があり、それならランクを上げ中心部のホテルを指定した方が観光しやすくお得だということも参考になった。まーこのネット社会、自分で手配すればいい話なのだが、見ず知らずにも程がある所なので今回は旅行会社にお願いしてみようと思う。
 
翌日朝にも連絡がなかった為、不安ならキャンセルして大丈夫だよ、またいつでも行けるしね😁と連絡した。そう、私は面倒になったのだ。Eちゃんの心配とは反比例し、私は検索しまくった結果、根拠のない自信に満ち、これもう一人で行けそうだなという気持ちになっていた。

 

北欧 (ララチッタ)

北欧 (ララチッタ)

 

 

出発前4

終業時刻の迫った旅行会社、ずっと怒ってるEちゃん、変な汗と笑いが出る私、ドン引きしてるお姉さん。結構な修羅場であった。Eちゃんは色んな国に行ったことはあっても、添乗員同行ツアーしか行ったことのない保守的な子なので、フリープランにそもそもの不安を抱えていた。それに加えて、私は大人になったとはいえ割とフラフラ何処かへ行ってしまうタイプの人間。「日本にいる時から連絡つかないなら無理だよ!」と爆発してしまったのであった。そりゃこの旅行会社、よくわからない入口だったけど、子供じゃないんだからそこは入って来てくれよ…と心の中で思ったが火に油を注ぐようなことをしている時間は我々にも、お姉さんにもないのだ。結局その日はヘルシンキストックホルムコペンハーゲン8日間のツアーを試算してもらい帰ることにした。

高層ビルを降り、とりあえず喫茶店に入る。すでに19時を過ぎていたが、お腹は空いていないとのことだったので、それぞれにコーヒーを頼み向かい合い座った。到着時よりも落ち着いてはいたが、少し気まずい雰囲気が流れる。当たり前のことしか言わない!とお姉さんをdisりだすEちゃん。三ヶ国を周るツアーに、荷物を持っての移動につぐ移動に対しての不安を口にしていた。私はツアーになっているのだから大丈夫なんじゃ…と思っていたし、スタンプラリーの如く多くの国のハンコが欲しかったので説得したのだが、そこの話し合いは平行線で終わった。(行った今となってはEちゃんの言い分は正論だと思う)

話が進まないままいい時間になってしまい、今日のところは解散となった。とにかく勝手な行動はしないから、となんとかなだめすかし駅に向かう中、我が家に向かうのに都合のいいバスが止まっているのを見つけた。あ、私あのバス乗るから!じゃあね!と速攻でバスに乗り込む私。行ったそばから勝手な行動をしている事に気付いたのは、乗ってからしばらく経ってからだった。

出発前3

日々検索しながら夜に電話で話すということを繰り返していたのだが、どうにもラチが明かない。早く決めなければ、という焦りもあった。そこで近場の旅行会社に直接行き、専門の方に知恵を借りようということになった。平日なので、すでに職から解き放たれた私が30分先に行き、仕事が終わったEちゃんが後から合流する、という約束をした。

翌日、直接電話をし、アポを取り時間通りに到着。高層ビルの少しわかりづらい入口をずんずん進むとオシャンティなフリースペースがあり、程なくして北欧担当のお姉さんと会うことが出来た。時間もなかったので考えてきた質問をどんどんしていった。

魔女の宅急便の舞台のような島、ゴットランド島は、これからベストシーズンになるということで繁忙期にはいるらしい。あちらの方達もバカンスでごった返し、めちゃくちゃお金がかかると聞いたので今回は候補から外した。ちなみにお姉さんは冬に行ったとかで、お店が空いてない所が多かったらしい。鬼◯川か!

よくツアーに組み込まれてるシリヤラインクルーズは実際どうなんですか〜と聞いたらば、移動しつつ豪華客船に気軽にに乗れますよ〜ということらしい。結局今回の旅では乗らなかったが、Eちゃんは2等客室ではスーツケースも広げられないかもという心配をしていた。その発想はなかったわ。写真などを見ても確かに、無理したら行けそうだけど割と厳しい気もする。あとタリンは本当に日帰りできるのか、だとか(出来る)を真剣に聞いていた。ふと時間を確認すると約束した時間を10分過ぎていた。

あれ、と思い普段から放置しがちな携帯を確認すると、着信と、「着いたけどどこにいるかわからない」「もう帰る」という目を疑うLINEの通知が来ていた。慌てて電話すると、もう高層ビルのエレベーターを降りているという。心が折れた、もう行かないと怒るEちゃんを、行かないかもしれないがまぁとりあえず話を聞こう、と訳の分からないことを言いつつなんとか宥め旅行会社に連れ戻すことができた。

出発前2

マックス9日間、ホテルプラス航空券で検索するようになってからも大変だった。添乗員同行ツアーに関しては最初から除外していた。まず、現地では日本倍くらいの物価だと聞いていたので、旅費自体は20万円以内に収めたいということ。日が迫っていること。その時点で添乗員同行ツアーは候補から外れた。あと、食べたいものを好きに食べられない、ただでさえ疲れるのに見知らぬ人間たちと団体行動などまっぴらごめんだった。

飛行機をスカイスキャナーで取ることも早々に諦めた。ギリギリで取るとなるとやはり費用がかさんでしまう。早めの手配ならこちら取る方が断然お得であろう。

それにしても選択肢が多すぎる。現地で会う予定の嫁いで行った先輩がデンマークコペンハーゲン寄りのスウェーデンに住んでいるので、コペンハーゲンに向かうことは決まっていたのだが、その要素でただでさえ混乱している頭は更にこんがらがっていた。

せっかく北欧に行くのだから、よく見かけたヘルシンキコペンハーゲンストックホルムは最低でも行きたいと思っていたことも混乱に拍車をかけていた。ヘルシンキから日帰りでいけるらしいタリンというところにも行きたい。ちなみにこの時点で都市名と国名は頭に入っていない。そうこうしている間に5月になっていた。

出発前1

四月某日。

高校、大学と一緒だった友達のEちゃんとの定期お食事会。「行き遅れたことにやっと気付いた」「子供は好きではないが子供は産んでおきたい」などといつも通りの不毛な会話をする中、北欧旅行を切り出したのは私だ。

元々北欧に行きたいと思い立った経緯は、前年に退職した会社の同僚が、スウェーデンに嫁いで行ったのがきっかけだ。私自身、前月に初めて台湾旅行に行き、想像以上に旅費が抑えられ楽しかったので、旅行熱がアツアツだったのもある。あとパスポートもせっかく更新したからハンコ増やしたい。

Eちゃんは旅行好きで、直近でもモロッコに行ったという話を聞いていたため、誘いやすかった。思った通り行きたい!と盛り上がったため、その場は5月末に行こうというざっくりとした会話で終わった。

 

翌日から早速ツアーをネットで検索してみたのだが、これがもう大変だった。まずカタカナが入ってこない。コペンハーゲンだとか、タリンがどこだか、覚えた瞬間忘れてしまうのである。残念なおつむなのは置いておいて、それくらい北欧の知識がないし、そんなに興味がなかったのである。興味がないのに行くのか、というご指摘は尤もなのだが、理由が出来たのでとにかく行ってみたかったというのが正直な所だ。

 

そして日程。少ない日数では5日位からある。私は4月末で退社する為、せっかく北欧まで行くのだから出来るだけ長い日数で行きたかった。しかしEちゃんは一般事務職の為、土日を挟んで最大9日間しか休めないとのこと。私自身10年一般事務職で働いた為、その感覚は十分理解できた。